十文字も戸叶も最高の悪友で親友だ。




年喰ってジジィになってもずっとずっと、一緒にいたいと思ってる。











秘密・サイドB

















「さぁーて、セナは何食う?」

「うーん・・・じゃあ冷やしうどんにしようかな」

「お、いいなー。じゃあ俺冷やしそば!」








セナを連れて、歩いて十分のコンビニに行った。

戸叶のパシリ。つか、金払うんだろうな?




レジで金払って、二つの袋を一つずつ持って外へ出る。

セナが何か物言いたげに俺を見上げてるんで、俺はセナの頭を軽く叩いた。





「なんだよ、セナ!言いたい事があるなら言えっつーの!」

「う、うん・・・あのさ・・・戸叶君のことなんだけど・・・」

「あ?やっぱ気付かれてたのかよ?それで?」

「うん・・・・どうするのかなって・・・」

「あー?どうもしねぇよ?」

「え?」







じっと俺を見上げる大きな眼に苦笑する。

心配してくれてんのは分かるけど、どうもする気ない。

だって男同士だぜ?お前らがくっついたのは奇跡だっつの。

気持ち悪ィなんて思われたら、俺生きていけねーし。







「なんだかなー。こうなったのはセナ達のせいなんだぜ?」

「? どういうこと?」

「セナと十文字が付き合ったから気付いたんぜ?
おれ、友情じゃねー意味でトガ好きかもって」

「そ、そうなの?」

「おー」












最初はさ、全然気付かなかったんだ。

十文字がセナのこと好きだなんてさ?

普通思いもしないよな?

同性愛っての、偏見無いつもりだったけど親友が、ってのだとまた話違うしな。

でも二人ともすっげぇ幸せそうだったし、なんか自然な感じがしてさ。

まぁ、こういうのもアリなのかなーって思って。

しかもなんだか羨ましくなっちゃったわけ。

だってマジ嬉しそうなんだもん、十文字。

俺らと遊んでる時とはまた違う笑い方してさ、もう周りに華咲いてっしよ。




羨ましくなってそんで、俺も恋人欲しいなぁーなんて思って。

それでさ?思い浮かんだ姿が女じゃなくてさ、トガだったわけ。

笑っちゃうダロ?でもそんで気付いた。

あー、俺トガのこと好きかもって。





トガが電話に出なくてすっげぇ苛々した時とか

女がトガにメルアド渡したの見て、ムカついてそれ破いちまった時とか

意味も無ェのにやたらトガん家に行きたくなった時とか






そんなんいっぱいあったのにさ、全然気付かなかったんだぜ?

我ながらバカだよなー。

でも答えが出たら全部納得。

ああ、俺、ずっとずっとトガのこと好きだったんだなって。









でもさ、同時に思ったワケ。

嫌われたくねぇなって。




マジでさ、お前達が付き合ってんのって奇跡だと思うぜ?

俺には絶対無ェ奇跡。

だから何も言う気無ェから・・・セナも余計な事すんなよな!

十文字にも言っとけよ!

トガに彼女が出来たら、俺はその内勝手に失恋するからさ。



あー、マジ腹減ってきた!さっさと帰ってメシ食おうぜ!










トガん家の安アパートの階段を音を立てて上る。

セナはまだなんか言いたげだったけど、気付かないフリをした。

笑ってなきゃ、今度は十文字にも心配掛けるだろう。







「おー!買ってきてやったぞー!」




勢い良くドアを開けて、でかい声でそう言った。

俺の後ろで立っているセナの頭をくしゃっと撫でる。

ニカッと笑ってみせるとセナも笑顔を返してくれた。



「ただいまー」







そうそう、お前は笑ってろよ。せっかく幸せなんだからさ。

俺のせいで凹んでたりしたら、俺が十文字にシメられんだろ?

俺も負けねぇように笑ってるからさ。









俺はトガと十文字の目を盗んで「ナイショ。」ってセナにアイコンタクトを送った。

セナは少しだけ目を伏せてコクリと頷く。









TRRR・・・・・TRRR・・・・・・









と、皆でメシ食ってたら急に電話のベル音が鳴った。

誰だ、なんて聞かなくても分かる。

今時着メロさえ使ってないシンプルなトガの携帯。






「なんだ」





ディスプレイさえ見ずに、通話ボタンを押して話し始める。

受話器の奥から聞こえたのは甲高い声。

長くなると判断したのか、トガはそのまま部屋の外へ出て行った。







「今の・・・・・女だった・・・よな?」







聞こえたのは聞き覚えの無い女の声だった。

俺達三人いっつもつるんでるから、当然知り合いは共通の連中が多い。



けど知らない。

夕メシ時に遠慮ナシに電話掛けてきて、トガが名前も確かめずに電話に出る相手なんて。





おれはしらない。







「黒木君!」

「黒木・・・・・」








なに、おまえら

なにそんなしんぱいそうなかおしてんの

おれならへいきだよ、ぜんぜん、だってかくごしてたし

わらえるよ、だいじょうぶ、わらえるから








「悪い、ちょっと出てくる」







トガがそう言ってそのまま出て行った。

服だって制服のままで財布だって持っていたかわかんねーのに。

セナと十文字が変な顔して俺を見てる。








わらえるよ。

だいじょうぶ、まだわらえる、だいじょうぶ。













最後通牒を出されるその時までは。


















わらえるって、ほんきで、おもってたんだ。











汚い窓の外からトガの原付の音が聞こえる。

名前を呼ぶことさえ出来ずにただ唇を噛み締めた。




















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六話書いてようやくちょっぴり事態が動きました。
書いてる自分は楽しいけど・・おもしろいの・・・これ・・(遠い目)
次回ようやくトガ視点。

黒木の誕生日までは怒涛の更新予定。