こういう時どうすればいいかなんて。 バカな俺にはわかんないわけよ。 誰かオシエテ? 捨てられたラブレター「あー?なんか落ちたぞ、糞三男」 「は?」 そう言ってヒル魔が床から拾い上げたのはピンクの可愛らしい封筒。 それを見た瞬間、その正体を察したヒル魔の尻には確実に悪魔の尻尾が生えたと思う。 「ケケケ。ここでご開帳といくか?」 脅迫ネタゲーットっと黒い手帳を片手に哂う。 けれどさして慌てる事もなく三男こと戸叶庄三は 「どうぞ?俺が書いたわけじゃないし」 と漫画本から顔も上げず、興味無さげに呟いた。 「っち」 悪魔がつまらなそうに舌打ちをする。 これが俺や十文字だったら慌てるところだけど。 「興味失せた。やる」 すっかりからかう気が失せたらしいヒル魔がトガの隣に座ってた俺にそのピンクの封筒を押し付けていってしまった。 いわゆるラブレターってやつを。 「トガ、これ」 よりによってなんで俺に渡す!?と思いながらトガの目の前にひらりとそれをかざす。 封筒を一瞥して邪魔だとばかりに眉を顰めたトガが一言。 「やる。好きにしろ」 「はぁああ?つか、いらねっての」 なんとなくほっとしつつも、気分は良くない。 だって、ほら。俺もこの手紙の主と同じく叶わぬ想いってヤツ持ってるわけだし? 中身も見ずに捨てちまう、ましてや他人に任せるなんて、すっげぇ、 「薄情モン」 「は?」 「薄情だっつの!!つーめーたーいー!」 二人が座ってるベンチをガタガタと揺らす。 瀬那達がこっちを見てるけどそんなの気になんねぇ。 「じゃあどうしろってんだ」 持っていた漫画を閉じてトガが俺を睨む。 「捨ててもいいから読むだけ読んでやれよ」 口を尖らせてそう言うと、トガがすっげぇ大袈裟に溜息を付いた。 そしてラブレターを俺から取り上げると、乱暴に封筒を破る。 中にはやっぱりピンク色の可愛らしい便箋が一枚入っていた。 「・・・・・・・・・・・・・読んだ」 と、三十秒も経たない内に便箋をくしゃって丸めてトガがそれを床に放り投げた。 「はぁああ?何してんだよ!」 慌てて無残な姿の便箋を拾う。 ギッ!と睨むとトガはそんな俺を呆れた顔で見ていた。 「読んだら捨てろって言ったのはお前だろうが」 「捨てろとは言ってねぇよ!!なんでそんな冷てぇんだよ!」 「興味ねぇし。お前こそなんなんだ」 「なにって・・・・・」 言葉に詰まった。 俺は俺なりに色々考えてる。 このラブレターの差出人と自分の想いを重ねて。 それが『くしゃっ、ぽい!』だぜ? そりゃ、怒るっての。 俺がもし好きだって言ったら。 やっぱりお前は機嫌悪そうに額に皺寄せて。 そんなもんいらねぇって簡単に捨てちまうのかな? そんなん想像するだけで、すっげぇ死にそうになる。 「おい、黒木」 「っんだよ」 「練習始まんぞ」 「わかってんよ!」 畜生、すっげぇムシャクシャする。 昔の俺なら場所も構わずそこらじゅう蹴り倒すところだけど。 ここじゃそうもいかない(つかヒル魔が怖ぇし) 「あの、黒木くん」 と、突然セナに袖を引かれて振り返ると 「これ、苛々してるみたいだから」 差し出されたのはレモンの飴玉。 ・・・・・・ガキかっての!!そう思いつつも。 「あー、サンキュ」 心配してくれてるみたいだし、何よりセナをないがしろにすると後で十文字が怖ぇから。 とりあえず笑ってそれを受け取った。 包みを適当に破って口に放り込まれた飴玉は、甘いはずなのになんか苦くて。 ごめんな、セナ? 心配してくれてんのは分かるけど。 こういう時どうすればいいかなんて、バカな俺にはわからない。 自分の想いが報われないって思い知らされた時に。 どんな顔したらいいかなんて、バカな俺にはわからない。 |