「大丈夫?」


と訊けば



「はぁ?何言ってんの?」



って君は笑って返すだろうから





僕は今日も何も言えずにいる。








歯痒い












それに気付いてしまったのは。

僕が彼と同じ境遇にいたからなのか。



時々見せる彼の表情に僕は息を呑む。

それは辛い恋をしてる、ちょっと前までの僕と同じ表情かお

気にならないわけがない。






彼の片想いの相手の戸叶君といえば。

いつも掛けてる濃い色のサングラスの奥の表情は全く見えない。

割と無口でたんたんとしている彼の考えていることなんて僕なんかに分かるはずもなくて。

でも僕と十文字君の関係を告白する前に気付いていた戸叶君は。




「ああ、やっとくっついたの、お前ら。おめでとさん」




なんて驚く事なく言ってくれたものだから、

割と同性との恋に抵抗ないのかな?っとも思ったけれど。







気付いていないのかな?


僕が気付いた黒木君のオモイ、戸叶君は本当に気付いていない?








黒木君の楽しそうな、けれど時々無理したような笑い声を聞く度に

僕はヤキモキしてる。



誰よりも勘の鋭い戸叶君が気付いていないはずない、って僕は思ってるけど。











「大丈夫?」


と訊けば



「はぁ?何言ってんの?」



って君は笑って返すだろうから








昔の自分と同じ、切ない後姿を見つめながら。





今日も僕は何も言えずにいる。