補足:こちらは楼楼様のサイトでのパラレル設定で戸叶さんが魔法使いとなっています。
またアメフト部は皆それを知っています。それを踏まえてどうぞv
「はぁあぁあ?!」
響く叫び声が、ロッカールームを震わせた。
罰ゲーム
賭けをしよう、と言い出したのは黒木だった。
夏休み明けの実力テストで、総合最下点を取った者は、最高点を取った者の
言う事を1日聞く。
などという賭け。
「賭けっつーか、罰ゲーム?」
ヘタな点を取れば、部活停止もありうる。
それを防止する意味もあって、満場一致で決まった。
そして今日、全ての答案がそろったのだが・・・。
「っつー事で、黒木罰ゲームな」
「っ、だって!」
総合得点最下点を取ったのは、誰でもない言い出した黒木本人だった。
「マジでやんのかよ」
先程最高得点を取った者からの罰ゲーム内容を聞いてから、黒木はどうにか
それから逃れようと必死だ。
「往生際が悪いぞ」
言うやいなや、パチンと指を鳴らし、次の瞬間には黒木の制服は黒地に白の
レース、白いエプロンの・・・メイド服になっていた。
「ちょっ、トガ?!」
着替え渋る黒木の制服は、戸叶の魔法によって強制的に変えられてしまう。
「“今日1日メイド服”な」
最高得点者―戸叶の声が、文句を言う暇もなく黒木にかけられる。
「っつか、何でフリルのレースつきなんだよ!!」
「オレの趣味」
しれっと言う戸叶の手中には、常の週刊誌ではなく『ゴ○ロリバイブル』が・・・。
「っ・・・、ガの・・・」
うつむいた黒木が小さく呟く。
「は?何?」
「トガのバカ〜!!」
〜教室〜
すっかり機嫌の悪くなった黒木は、メイド服のまま周囲にガンを飛ばしまくっている。
「・・・く、黒木君、どうしたの?」
「あー、罰ゲーム」
いつもとは違い、完全にブチキレてる黒木が怖いのか、セナは本人ではなく
十文字に理由を尋ねた。
返ってきた答えはあっさりとわかり易いが、それがこのドス黒い怒りのオーラ
を消してくれるわけはない。
「着替えは?」
「戸叶が没収。さて、写メって雪さんに送るか」
笑うかな?怖がるかな?などと呟きながら、携帯を向ける十文字はある意味
で怖いもの知らずと言えよう。
カシャッ。
「!十文字!!」
音に過敏に反応した黒木が、十文字の手から携帯を取り上げようとするが
一瞬遅く、写真は直前に十文字が打ち込んでいたメールと共に、雪光の携帯
へと送られてしまった。
「誰に送ったんだよ!!」
「雪さん。まー落ち着けって。別にいいだろ、勉強尽くめの雪さんに、軽〜く
笑いのおすそ分けだ」
「しかも笑いかよ!」
笑いじゃなきゃ何がいいんですか?
怖くて突っ込めないセナだった。
そうこうしている内に、始業のチャイムが鳴り、担任である女性教師が教室に
入ってくる。
「おはよ〜みんな。・・・く、黒木君?どうしたの??」
どこかテンポのズレている担任の指摘に、黒木は天の助けとばかりに口を
開こうとした。
が・・・。
「罰ゲーム。今日はこの格好で過ごすんで」
それよりも先に、戸叶が説明という名の報告というか宣言をしてしまい、黒木
の思惑はあっけなく潰される。
「?!トガ!!!」
「うるさいよ、黒木。約束は約束だろ」
やんわりと、有無を言わせない戸叶に、黒木は押し黙って机に伏せた。
「・・・そう」
口下手なのか、担任は咎めることもできずに、結局はそれを容認するのだった。
「だ〜っくそ!動きづれ〜!!」
移動教室その他もろもろ。
バニエで膨らんだミニスカートは動くごとに足をくすぐり、くすぐったいのだが
ここで笑ってしまっては駄目だと、黒木はせめてもの抵抗に怒っている。
それすらも周囲は笑ってしまうのだと、気づいているのだろうか?
「歩きにくいんだってっ。どーしてこんなカカト高いんだよ!」
カカトの高い靴は慣れないゆえに歩きにくく、ともすれば転びかねない。
さらに、オーバーニーソックスを留めるためのガーターベルトが、歩きにくさに
拍車をかけていた。
両腕に昼食のために購買で買い込んできたパンやジュースを抱えつつ、慣れ
ない靴に痛む足をせっせと動かす。
十文字と戸叶は教室で待っている。
「ったく、言う事聞くのは1個っつっときゃ良かった・・・」
後悔しても始まらない。
メイド服のスカートを翻し、廊下をずんずんと歩く姿は、生徒達の目を引く。
(視線が・・・)
女子のからかいを含んだ可愛いものを見る目、はまだいい(そんな人が過半数)
問題はオトコの、完全に侮蔑した目や、嘲りを含んだ視線。
それに混じる、熱い視線・・・。
オーバーニーソックスと、スカートの間に少しだけ覗く素足の部分を“見られて
いる”気配がとれない。
「あ゛〜、サブイボ出てきた・・・」
ねっとりとした視線は、背後から。
早歩きするなり走るなりして振り払いたいのだが、痛む足は今以上の速度を
出せそうにない。
「!!!」
生暖かい手が、素足の部分を撫で上げる。
「誰だよっ!」
ばっと振り向いた背後には、2年生らしき数人の男がいた。
「なぁ、コレって趣味?」
「はぁあ?!」
「俺らにもゴホーシしてくんねぇ?」
ギャハハハと下品な笑い声が廊下に響く。
「誰がテメェらになんか!」
「おーおー、生意気言って。こりゃオシオキだな」
リーダー格らしい男が、下品なニヤケ笑いを浮かべたまま、黒木の腕を取る。
「っ。放せよ!」
引かれる力に抵抗して身をよじるが、ヒールの高い靴のせいで体勢を崩し、
転びかけた。
「!・・・・あれ?」
床が目前にせまってきて、転ぶ、そう思って目を閉じたが、その衝撃はやって
こずに、誰かに抱きとめられる。
「遅いと思ったら。何があったんだ?」
尋ねておきつつ、視線はしっかりと黒木の腕を掴んだままの男に向けられている。
「放せ」
「へっ、おーじサマのご登場ってかぁ?」
侮蔑と、からかいを含んだ言葉に、黒木はかっとなって男に言い返そうとした。
「おまっ」
「五月蝿いよ、アンタ」
それを遮る様に、戸叶の抑揚のない言葉が男達に放たれる。
「オレら、アメフト部の主戦力。言いたい事わかるよな?ヒル魔に・・・」
そこまでだった。
そこまで言い終わるか終わらないかの内に、男達は「ヒル魔?!」と口々に
叫びながら逃げていった。
「・・・さすが」
何がさすがなのか。
「トガ、権力に巻かれる主義だっけ?」
ヒル魔の名が出たことが信じられず、黒木は戸叶の顔をまじまじと観察した。
「いや、腹減ってるから余計なことしたくないだけ」
「あ、そ・・・」
別に、魔法使う程度で腹は減らないと思うのだが、そこは使えない人間なので
よくわからない。
「大丈夫だった?黒木君」
突然現れた雪光が、黒木に問う。
「?!雪さん・・・。いや、大丈夫だけど」
「礼言っとけ。知らせてくれたんだから」
タイミング良く現れたのは、雪光が知らせてくれたかららしい。
「ありがとーございましたっ」
「メイド服着てたから、すぐにわかったし」
からまれている黒木を見かけ、雲行きが怪しくなってきたのを察知して、教室
まで知らせに行ってくれたのだ。
「あ〜!!そうだ!アレ、今朝の写メ!消しといて!!」
すっかり忘れていたが、朝十文字が雪光に写メールを送っていたのを思い
出し、消しておくように頼む。
「うん。わかってるって」
教室に戻っていく雪光を見送り、2人も戻ろうと歩き出す。
「ちょっ・・・と待って。早ぇーよ歩くの!」
「は?お前が遅いんだろ?」
いつも通りの歩調の戸叶は、今の黒木にとってはとても追いつけない。
「足っ。痛いんだけどっ」
立ち止まり、振り向いた戸叶がようやく黒木の靴のことに気がついた。
「あぁ。・・・ほら、行くぞ」
ほら、と当然のごとく差し出された手に驚き、困惑しつつその手を取る。
「まったく、お前1人でほかっとくとロクな事ねーな」
「っるせ。大体トガが悪いんだろーが!こんな服着せやがって」
しっかりと握られた戸叶の手は冷たくて、体温の高い黒木には心地良い。
周囲の目は気になるけど、手を離すなんてとてもできなくて・・・。
「っつーかさ、それこそオレの服変えるなんて、魔法の無駄活用じゃね?」
「・・・・・・・・・・・楽しいからいいんだよ」
(楽しんでやがったのか!!)
今明かされる衝撃の真実・・・・・・。
「・・・おい、糞次男。何だそのチンドン屋な格好は」
明らかに呆れて馬鹿にしているヒル魔に、黒木は本日何度目かの絶叫をした。
「だ〜!!るっせ!!ほかっとけよコンチクショー!!!」
「・・・・・(怒)」
カシャッ。
「脅迫手帳収納」
「はぁあぁあ?!」
予想できていたヒル魔の対処に、デビルバッツの面々も呆れてやりとりを
見守っている。
「黒木・・・。返せば返す程墓穴掘るぞ?」(十)
「馬鹿は学習しねーらしいな」(戸)
「黒木君、落ち着いて・・・」(セ)
「あらでも、よく似合ってるわよ?」(ま)
「似合ってても嬉しくないと思いますよ?まもりさん」(モ)
羨ましいらしい姉崎の発言に、黒木はガックリと肩を落として落ち込んだ。
「似合ってる・・・・・・」
確かに、似合っているといえば似合っている。
黒木の外見は可愛らしいとは言わないが、母親似の中性的な顔立ちは言葉
を変えて並び立てれば、グラビアアイドルとも取れる。
「お前母親似だからな」
「・・・大人びた三爾ちゃんか、幼い一実さんってカンジか?」
追い討ちをかける友と恋人に、気分は投げやりになりつつある
「おら。遊んでねーでとっとと着替えろ!」
『うぃーす』
ガシャコと、ヒル魔の構えたマシンガンが乱射を始めないうちに、慌てふためいて
着替えを始めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・トガ」
「何だ」
「これ、どうやって脱いだらいいんだ?」
「あー。とりあえず、エプロン外したらいいんじゃねーか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「は・・・。わかったわかった」
パチンと指の鳴る音で、ようやくメイド服から解放されたのだった。
End?いえいえまだ続きます↓
「で、何でまたコレなんだよ!」
部活終了後、再度着替えさせられたのはまたしてもメイド服で。
「や、まだ1日終わってねぇし」
「っざけんな!返せよオレの制服!」
にやり。
笑った戸叶の顔は、真っ暗な帰り道でも邪な事を考えているのは一目瞭然だ。
「Σ(−_−;;(ビクッ)な、何だよ」
「いーや、別に?」
いつものカッカッカッという笑い方ではなく、喉の奥でクククと笑う。
(オレ、どうなるんだ??)
十文字は雪光を送って帰ったため、今は2人きり。
「黒木、今日は泊まってくだろ?」
「はぁあ?や、ヤダ」
「その格好で帰るのか?」
「!!」
「まぁ頑張ってゴホーシしてもらおうか」
「んなっ!テメェそれが狙いか!!」
「おっと。・・・さて、何のことやら」
取り繕うように言う戸叶に、図られた、と気がついても後の祭りで。
ぎゃいぎゃいと文句を言っても、どうやらこの後の展開は止められそうにないと、
頭のどこかで理解している自分がいる黒木だった。
さてさて、明日の部活は出れるのだろうか?
おわり
あとがき
出来ました!昴流サマのリクの指パッチンでメイド服!リクしてくれました昴流サマのみお持ち帰りOKとさせて頂きます。
コピペでどうぞ〜♪
書いててとっても楽しかったですvv一応、どんなカンジのメイド服を着せるか、
本当にゴスロリバイブル見たりしながら考えて、黒木に着せて落書いてました。
個人的にスカートから見えるガーターベルトは外せない(黙れ)
2年生に絡まれるシーンは、ホントはキレトガを書こうと思ったんだけど
とある作品の影響を受けそうでやめに・・・。その代わり権力者を出してみる。実際この程度じゃ動かないと思うけど。
トガの魔法は使うとお腹が減るらしい。ってか、ハリ○タがそんな感じだったからですが(苦笑)
ではでは〜、これからも新興宗教並みに普及しましょうね!昴流サマvv