日が沈めば闇が全てを支配する。 月すら出ぬ闇夜ならば尚更の事。 ――――――小さな星の光には気付かずに 乱レ闇夜二、落ツ光ヲ獣でさえ眠りにつく時刻。 小股潜りの又市はその悪名に似合わぬ風呂敷みを持って、闇の中を駆け抜けていた。 リィィィン―――・・・・ 見慣れた屋敷の前で鈴を鳴らす。 すると屋敷の最奥の部屋の障子が少しばかり開かれた。 又市はその隙間にするりと身を滑らせる。 障子に掛かっている手の持ち主に素早く口付けをすると口端を上げた。 蝋燭に照らされた影が二つに重なる。 それは長い間折り重なっていた。 「又市さん、これは――――?」 やっと解放された身体を壁にもたれさせ、は問うた。 又市の足元には見慣れぬ風呂敷みが置いてある。 「開けてみて下せぇ」 それをすっと差し出すと、又市は意味ありげに笑った。 予め用意されていた酒を喉に通せば、淡い苦味が広がる。 「じゃあ、お言葉に甘えて」 が結び目を解くと、何か薬品の匂いと共に鮮やかな反物が畳の上に広がった。 手に取るとそれはどうやら帯のようである。 「どうなさったんですか、これは」 「この間着物をお買いになったでしょう」 問うと、間髪いれずに返事が返ってきた。 「どうしてそれを?」 「そりゃあ、秘密でございやすよ」 小股潜り、というよりはまるで悪戯小僧のような笑みを見せ、又市は酒を飲み干す。 空になった器を置くと、新しい着物に合うだろうその帯を手に取った。 「気に入って頂けやしたか?」 「ええ、もちろん」 の身に帯を当てると又市は目を細めた。 くっと笑いを噛殺す。 「どうかしましたか?」 「いや―――大したことじゃあ御座いやせんよ。ただ・・・」 「ただ?」 「そいつを締めたさんの着物を剥いだらさぞかし面白かろうと思いやしてね」 そう言って下卑た男の笑いを見せる。 からかわれているのだ。 「御止め下さい、お代官様・・・ですか?」 「ええ、悪党の奴に似合いの遊びで御座いやしょう?」 「では私は?」 「どこぞのお姫さんじゃあご不満で?」 又市は帯ごとを引き寄せた。 背中から抱きしめ、うなじに噛み付くように口付ける。 背筋を辿って舌を這わせると、が身をよじって嬌声を上げた。 「不満はありませんけれど――――ならばどうか」 「最後には攫って下さいまし」 切なげに洩らされた言葉に又市は一瞬息が詰まった。 それはいつか別れなければならぬ定めに対しての、の想いなのだろう。 狡賢い、と思いながらも又市はその言葉に答えを返すことが出来ない。 全てを飲み込むように唇を合わせると、何も見えぬよう目を閉じた。 その晩、何かに追い立てられるように又市はを抱いた。 前戯を愉しむ事無く、蕾に指を差し入れる。 無理矢理に唾液で濡らしたそれに、自身を埋め込むとは縋るように又市に抱きついた。 又市も片腕での背を支え、空いた手での頬を撫でる。 「・・やぁ・・・ぁあん!・・・・・又市さ・・・」 前後に揺らせば嬌声が上がる。 いつまで経っても行為に慣れぬ身体を愛しく思いながら、頬に伝う涙を舐め取った。 塩辛いような―――それでいて何処か甘い。 乳房に噛り付くと、やはり甘い味がした。 舌で転がせば、下部の締りがきつくなる。 「さん」 耳元で囁けば、びくりと身体が震える。 愛しい。 その、全てが。 最奥を一気に突くと、の足が大きく痙攣しガクガクと震えた。 が達したと同時に自身を引き抜き、己も達する。 白液がの腹を汚し、又市は彼女を抱きしめながら身を横たえた。 外気に晒された乳房に顔を埋める。 男の匂いと女の甘い匂いが又市の鼻先を撫でた。 空の色が変わる頃。 又市は起き上がり、素早く白装束を身に纏った。 眠るに一つ、口づけを落として障子を開ける。 遥か先に見える太陽の光に又市は目を細めた。 「夜が明けても、それでもまだ貴方に抱かれていたいと・・・・そんな夢を見るのは滑稽で御座いましょうか――――」 いつの間に目を覚ましたのか。 又市は振り返る事すら出来ずに、動きを止めた。 「奴には――――過ぎた夢で御座いやすよ」 ようやく出た言葉は掠れていた。 身を翻し、布団に散らばった黒髪に指を絡める。 するとが又市の首に手を回し、触れるだけの口付けが交わされた。 「いつか―――――」 まるで風のように小さな音で紡ぎだされたその言葉にが身を起こすと又市の姿は消え失せていた。 最後の言葉を肯定するかのように、鈴の音が鮮やかに響く。 は一人、彼の人の温もりの消えた身体を抱きしめた。 月すら出ぬ闇夜に 小さな星がそれでも確かに光り輝いている事に 貴方が気付くのは何時のことで御座いましょうや――――・・・・ 『いつか―――――』 その言葉が小さな星の光に、希望になるのでしょうか。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー えーー。リクエストは2万九千HIT羽鳥様の裏夢で甘々・・・のはずです。 甘いって何処がすいません・・・最初は甘かったんです(多分) どうしても又市だとこんな感じに。だから甘い夢ってリクがよく来るんでしょうか? 本当又ちゃんワンパターン(土下座) 一度ギャグで巷説・異世界トリップとかやってみたいですね(笑)ギャグで |