何時からだったかわからない 何時までなのかもわからない 手も足も心も全て私の自由には もう ならない 全て貴方に ――――――絡め取られたリィィ―――ン・・・・・ 約束の刻限より少し後、いつものように鈴の音が鳴り私は窓を開ける。 そうすると窓の隙間を縫うように貴方が身を滑り込ませて私に微笑んでくれる。 そう、いつもは。 けれど今日はいつもと違った。 笑うことも抱きしめる事もせず、冷たい指で私の頬を撫でて言った。 「すいやせん、奴は――――・・・・・」 行かなきゃならねェ、と言った刹那、激しい口付けと共に眩暈が襲った。 又市の舌が己の舌に吸い付いて、うまく呼吸が出来ない。 突然の事に反応できず、ただ為すがまま二人は床に倒れた。 カタン、と何かが倒れる音がする。 自分に覆い被さってる又市の体温は低く、冷たい。 「さん、奴は―――・・・・・・」 言葉は最後まで紡がれる事無く、互いの唾液と共に顎を伝う。 又市の下からどうにか逃れようと両腕で又市の胸を押して、その感触に又市が首元から顔を上げる。 目が合った。 どうして。 あなたが。 「又市さん・・・・・?」 そんな辛そうな顔をしているのですか――――? 一瞬の戸惑いの後、又市はまたすぐにの首元に顔を埋めた。 何度も、何度も、しつこく同じ場所を吸い上げられて悲鳴を上げる。 優しさなどないように思え、身体が震える。 又市ではない、ただの獣が私を組み敷いている――――― 「又市さん!!」 何か言って欲しくて、理由でも言い訳でもなんでいいから聞きたくて。 必死で名を呼べども答えてはくれない。 そうする内に又市の手が襟元から手を差し入れ、膨らみに触れる。 ひんやりとした感触に悪寒と恐怖が広がる。 何故。 何も分からない。どうしてこうなったのか。 今まで口付け以上の事をしなかったお人がどうして今突然私を組み敷いているのか。 ――――――行かなきゃならねェ 何処へ?何故? 戻って来れないのですか? だからそんな風に貴方は私を抱こうとするのですか? これはお別れの儀式なのですか? 「嫌」 「さん」 「嫌ァァアア!!」 私は最後の力を振り絞って又市さんを突き飛ばした。 息が苦しくて涙で前が見えなくて、自分が今どうなっているかなんかわからなくて。 何もかも貴方に絡め取られてしまったのに、それなのに貴方は私を捨てるというのですか。 「又市さん、何処へ行こうとしているのです」 「私を捨て、何処へ」 睨みつける間もなく、白い影が動いて私を抱きしめた。 温もりのない冷たい唇が合わさる。それは血の味がした。 「すいやせん、奴は――――・・・・・」 意識が朦朧とした。何か鼻につく匂いがする。 又市の顔が霞んで見えない。 意識はそこで途切れた。 |