小さくて脆くて柔らかそうな。



壊れはしないだろうか?




この鉄で覆われた腕で抱きしめても。













狛村左陣は行き付けの茶菓子屋に顔を出していた。

この日は七夕という事もあり、店も色とりどりの菓子と着飾った女性達で賑わっている。

そんな雰囲気に不釣合いの狛村は―――こんな雰囲気が大好きな女性を一人連れていた。

先日交わされた約束の為に。








「すごい大きなお店ですね!人がいっぱい!!」

「はぐれぬよう前を見よ、

「あ、はい!・・・あ〜〜すごい!あれ美味しそうです!!」

「あれが欲しいのか?」

「はい!あれがいいです!!」





が『あれ』と言ったのは七夕用のひし形の菓子。

ひし形の土台の上に織姫と彦星が乗っており、天の川と思われる星が散りばめられている。



「主人、それをくれ」

「へい、毎度!!」



人の良さそうな菓子屋の主人は言われた品物を包み、狛村に渡した。

は嬉しそうにそれを見つめる。





「じゃあ詰め所に戻りましょうか」

「・・・・詰め所で良いのか」




七夕ということもあり、今日は夕方から花火大会が催される。

狛村は彼女が祭りを好むということを知っていたので、てっきりそちらに顔を出すのかと思っていた。

現に仲の良い同期の人間に誘われていたはずだ。


狛村の意図を察したのか、は狛村を見上げた。




「いいんです、どうせ私の背じゃ人ごみで花火なんて見えないですし。
詰め所からも花火は見えますし。それに――――」

「?」

「隊長は騒がしいのお嫌いでしょう?」

「・・・・・」

「――――狛村隊長?」





それは無意識だった。

鉄の手は彼女の肩に触れていた。

細い肩だった。

思ったよりもずっと。




「隊長?」





彼女の小さな声が少し擦れていた。

恐がらせただろうか。

この鉄の手が。

この大きく分厚く硬い手が。






恐いと思う。


ただ恐いと。






この小さく脆く柔らかいこの存在を。


いつかこの鉄の手で。





抱き潰してしまうのではないかと。






砂糖菓子よりも甘いこの存在を。



欲しいと思ってしまったあの頃から。






「隊長?」

「済まぬ、少々考え事をしていた」

「いいえ・・・・じゃあ行きましょうか」








恐いと思う。

ただ恐いと。







唯一の救いは彼女が己の心に気付いていない事だ。

思いもよらぬだろう、目の前の男が。





自分を欲しているなどと。







「隊長!早く行きましょうよ!!」





菓子を傾けないように気を付けながらも何処かはしゃいだ様子では狛村を急かす。

この少女のあどけない笑顔に何度と無く救われ――――



何度と無く鉄の拳を固く握り締めた。









今はこのままでいい。


永遠にこのままでいい。





そう思いながらも、何処か。









この鉄の腕に彼女を閉じ込めてしまえたらと。







七夕の夜、星々に願う。






彼女の隣で――――決して彼女に知られぬよう――・・・・













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ずっいぶん遅くなりました。狛村隊長大好きすぎます。
同士様、是非狛村隊長に愛の手を!!
かなり自己満な作品になりました・・・・