夏の風物詩っていえば?



「あー、花火?」

「かき氷!!」

「・・・・・ジャンプ」





十文字正解。黒木ニアピン。ハイ、トガちゃんバツゲーム。

じゃ、花火買ってきてね?



「ハ?」









青春ベイべー












「おー、すっげー!」

「うわっ、黒木こっち向けんな!」

「もっと派手なヤツないかなー?」

「なんで突然花火なんだ・・・」







夏休みもあと少し。

花火がやりたいと言い出したに黒木と十文字がノった。

場所は戸叶の家から少し離れた寂れた駐車場。

隣は畑だから少しくらい騒いだって怒られない。






「おい、お前ら花火代払え」

「ダメ。トガちゃんバツゲームって言ったでしょー」

「ケッケッケ。諦めろ、トガー」

「ハ?ふざけんな。十文字、お前だけでも半額もて」

「どうせ安売り1000円だろうが。ほら、500円」

「おう」

「問題解決。じゃあトガちゃんもやろー」






このままじゃ漫画を読みかねない戸叶をが立たせる。

手を引かれ、渋々立った戸叶に黒木が花火を渡した。







「つか、線香花火か?」

「だって、もう無ェもんー」

「戸叶がノロノロしてっからだ」

「皆でやれば楽しいでしょ、多分」

「多分って言うな」









輪になってそれぞれが線香花火を持って、十文字が火を付ける。

バチバチと線香花火が小さな音を立てた。






「なんか夏も終わりって感じだねー」

「・・・・・まぁな」

「くそっ!アメリカ合宿のせいで海にも行ってねぇし!」

「なんならこれから行くか?」

「ハ?マジか?」

「おー、行くか!?、俺のケツ乗ってけよ」

「もしかしてマジで言ってんの?ってか黒木の後ろはイヤ」

「ハァアア?なんでだよ!」

「危なっかしいから。十文字のバイクがいいなー。一番カッコイイし」

「おお、いいぜ。じゃ、行くか?」

「しゃーねーな・・・・」






夜中の1時。ぞろぞろとバイクに跨る。

私は十文字のお腹に腕を回した。

黒木がまだブツブツ言ってる。







「十文字いいとこ取りかよ」

「ハァ?何言ってんだ」

「カッカッカ。妬いてんだよ、ほっとけ」

「ほら、ブツブツ言ってないでさっさと行くよー!」

「おー!」



黒木が先頭を切って走り出して、戸叶・十文字のバイクがそれに続いた。

十文字の背中に張り付く。

昔と違う意味でその背中をとても大きく感じる。

アメリカから帰ってきた三人はまるで別人みたいに大人びて見えた。








「私もアメフト部入ろっかな・・・・・」








十文字の背中で無意識に呟かれたその言葉は。

新学期、無断で出された入部届けのおかげで現実になる。







出したのはもちろん、三人の悪友達。











――――まぁ、許してあげましょう?








私達の夏はまだまだ終わらない。