「なぁ・・・・トガ・・・・」 「あ?」 「トガって俺とセックスしてぇ?」 「ハ?」 親友改め、恋人の黒木浩二がまたとんでもないことを言い出した。 オセロこいつが突拍子のないことを言う事自体は大して珍しくは無い。 いつだったか突然あの映画が見たいと騒ぎ出し、 この間はクイズ番組の真似をして、部屋一面トイレットペーパーだらけにした。 ある程度の事には慣れているとはいえ、さすがに今回はどうかと思う。 というか、お前、 「昼メシ食ってる時に言う台詞か・・・・」 「だって今十文字いねぇし」 「それを考慮した事は誉めてやる。上出来だ。でも今じゃなくてもいいだろ」 さすがに十文字の前では言えなかったらしい黒木が口の中に含んだパンを噛みながら口を尖らす。 「だって今、思いついたんだもんよ」 「ああ、そうかよ」 呆れて物も言えない、とは昔の偉人はよく言ったもんだ。 飲み物を買いに行った十文字がいつ帰ってくるかわからない。 黒木が口の中のもんを飲み込むのを待ってから、読みかけのジャンプを閉じた。 「どうせ今日帰り寄るだろ。そん時な」 「ハァア?なんだよ?イエスかノーかくらい今答えろよ」 「ハ?なんだ、お前は。サカってんのか?」 それは言わば軽い冗談だった。 だが「うっ」と言葉を詰まらせる黒木に、思わず驚く。 「・・・・・・・・・お前やりたいのか・・・」 「ああ、やりてぇよ!俺はトガとセックスしてぇの!」 呆れたように言った言葉が気に喰わなかったのか、黒木がキレた。 いきなり首に巻きついてきたと思ったら、顔をぶつけられた。 本人はキスするつもりだったらしいが、生憎サングラスが邪魔している。 俺のグラサンに思い切り顔をぶつけた黒木が「痛ェ!」と声を上げた。 「バカ。なにやってんだ」 「なにって、ちゅーだろ!!」 「割れたら弁償させるからな。」 「グラサンより俺の心配しろっての!!」 ますますキレた黒木にグラサンを奪われる。 さっきと同じようにキスしようとして、今度は成功。 唇が重なっていつもはまぐろの黒木が舌を入れてきて、少し理性がぶっ飛びそうになった。 「・・・ふっ・・・・は・・・」 慣れない仕草で俺の舌を吸おうとする。 そんな黒木の舌を辿るように舌を絡めてやると、黒木の腰がびくりと震えた。 「もう、十文字が戻ってくるぞ」 「ん、もうちょい」 「帰ったらしてやるから」 「セックス?」 「そんなに簡単に出来ねぇだろ」 俺の肩に凭れながら息を整える黒木の頭を撫でてやる。 ガキ扱いされたと思ったのか、黒木が顔を上げて俺にガンつけた。 「トガはしたくねぇの?」 「だからそんな簡単じゃねぇって」 「俺はセックスしてぇかどうか聞いてんだよ!」 真昼間に吐く台詞とはとても思えないような声が、誰もいない屋上に響いた。 いつもなら頭殴って黙らせるとこだが、あまりの真剣さに言葉を失う。 「・・・・・・・・やっぱ女の方がイイ?」 不安そうに呟かれたのは、多分コイツの本音。 「ホントにバカだなお前は」 閉じたジャンプを黒木を抱き込んだまま、適当に開く。 じぃっとガキみたいに俺を見る黒木に苦笑せざるを得ない。 「ちゃんと段階踏んでヤってやるよ。痛くねぇようにな」 「それって―――――」 「俺だってお前とヤりてぇ。そういうこった」 どうにもこっぱ恥ずかしくて、視線を逸らしながら言ってやった。 その言葉に満足したのか、黒木は食べかけのパンに噛り付く。 それからしばらく十文字が帰って来るまで。 俺は黒木を抱きこんだまま今週のボーボボを読み耽った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー モンジはとっくに帰って来ていて、出るに出れずにいたと思われ。 またちびちび進んでいきます。男同士は本当に慣れるまで3〜4年はかかるらしいです。 タイトルは友人が歌ってた某アイドルの歌から。 |