9月2日 新学期入って二日目。

朝起きたらメールの着信が二件。




『2005/9/2 06:25
 戸叶
 無題

 おめでとさん。ケーキはねぇぞ』



『2005/9/2 06:34
 十文字
 無題
 
 よぉ、16歳。朝練遅れんなよ』





「あ、今日俺誕生日だ」






携帯のスケジュールを確認して初めて気付いた。

カレンダーなんて気の利いたもんは俺の部屋にはねぇし。



どうせなら電話掛けて来いっての!特にトガ!!













誕生日に用意するもの:浩二編






















「ちぃ〜〜っす」


誕生日ってだけでなんだかわくわくする。

ガキだって言われるけど、いいじゃんか俺ガキだしよ!

でかいケーキ買って、三人で酒飲むってのが毎年のパターン。

二人とも甘い物そんな食わねぇーからいつも呆れた顔してっけど。





「よぅ」

「遅ぇぞ」




部室に入ってすぐ長男と三男が俺を出迎えた。

ていうーか、俺誕生日一番早ぇじゃん。俺が長男じゃん。





「よぅ、ガキ共。二人とも今日から一ヶ月俺に敬語な」

「ハ?毎年言ってんぞ、それ」

「年上なら年上らしいことしてみろよ」

「なんだよノリ悪ぃな」






ちぇ、と拗ねて見せると二人して俺の頭をくしゃっと掻き回した。

なんだよ、ガキじゃねっつの。俺のが大人なんだからな!




「あれ?今日黒木君誕生日なんだ?おめでとう」

「おう、セナ!なんか寄越せ!」

「ええ??」




「黒木君誕生日なんだってね〜〜〜これ好きなの食べていーよー」

「うぃっす。ごち」




「誕生日おめでとう、黒木君。これからも頑張ってね」

「ありがとゴザイマス」





「おう、糞次男!誕生日なんだってなぁ。いやープレゼントは何がいいかな〜〜?」

「いや・・・マジでいらねぇ・・・」








なんかアメフト部の連中にもたくさんおめでとうって言われた。

照れくせーな、なんか。十文字達以外にこういう風に祝われると。













そうこうしている内に放課後になって、部活が終わった。

誕生日だからって悪魔が練習を加減することなんてあるはずもなく、クタクタだ。







「あ”〜〜俺の誕生日が過ぎてくーーー」

「んなこと言って、どうせまたケーキ丸ごと食うんだろうが」

「当たり前だろ、十文字!!誕生日だぞ!?」

「・・・・・・俺ん家でか」

「他にどこかあんだよ!!お前ら早く着替えろ!」





着替え終わって、鞄と紙袋を持って二人を急かす。

紙袋には皆から貰った菓子が入ってる。つか、なんで全員食いもんなのよ?

と、十文字が頭を掻きながら俺とトガを交互に見た。





「あー、黒木。俺今日遠慮しとくわ」

「ハァアアア?なんでだよ!」

「だってよ・・・・なぁ?」

「なぁってなんだよ!」

「いや・・・・だから・・・・」





もごもご口ごもる十文字を問い詰めるように前に出る。

胸倉でも掴んでやろうと思ったら、逆に首根っこ掴まれた。







「じゃ、帰るぞ黒木」

「トガ!!なんだよ、十文字は!?」

「気ィ使ってんだよ、気づけバカ」

「ハァアア??・・・・・あ」







去年とは違うコト。それは俺とトガが付き合ってるっつーこと。

もしかして十文字、それで遠慮してんのか?






「分かったか?さっさと行かねぇとケーキ屋閉んぞ」

「お、おう・・・・じゃあ十文字、明日なんか奢れよ!」

「ああ、分かったよ」






トガにずるずる引きずられたまま部室を出る。

十文字はそんな俺達を見て面白そうに笑ってた。











途中ケーキ屋に寄ってから三号のショートケーキを買った。

姉ちゃん達がよく買ってくる甘すぎないケーキは俺のお気に入り。

菓子は山ほどあるから酒だけ買って、トガのアパートに二人で帰る。

アパートに入ってすぐケーキを開けて、蝋燭も立てずにフォークを突き刺した。






「色気ねぇーな」

「んー、だって腹減ってんだもんよ。トガ、ハッピーバースデーでも歌ってくれんの?」

「ハッ、誰が歌うか」

「だろ?うめーよ、これ。トガも食え」



フォークに思いっきりケーキを突き刺して差し出すと、少し眉を顰めてからそれを口に含んだ。

全部飲み込んだ後、ビールを一気に煽る。



「ま、不二屋のケーキよりはマシだな」

「あー、アレは甘ェよな。俺もあそこまではちょっとなぁ・・」

「ワンホール丸々食ってるヤツが言う台詞か」

「んだよっ、だからトガも食えっての!」

「もういい」





そう言って、またビールに手を伸ばすトガにフォークを咥えてしばし考える。

うーん、なんかいいセリフねぇかな。






「なー、トガー」

「ハ?」

「じゃあさ、ケーキ食った俺を食ってよ」

「・・・・・とうとう沸いたか」

「違うっての!!大人しく誘惑されろよなー」

「・・・・・もう少し誘い方を学べ」





トガの手が口に咥えた俺のフォークを抜き取った。

べロッて唇を舐められて、それからキスされる。



クリームがまだ残ってる口の中に舌が入って、いつもよりもクチュクチュとでかい音がした。






「ゲロ甘」

「ん、トガも甘かった」

「来年からはケーキはナシだな」

「ハァアア!?嫌だっつの!来年も食うからな!」






トガに抱きつきながら俺はケーキを口に突っ込んだ。

そのままトガに思いっきりキスする。

クリームだが唾液だかわかんねぇもんが混ざり合う。









来年だって、再来年だってこれからずっとずっと、

誕生日にはケーキとトガとビール。








「なぁ、これから鍵屋行かねぇ?」

「ハ?鍵?」

「プレゼント、トガん家の合鍵欲しー」

「んなもん、明日でいいだろ」

「ん、約束な?」











さぁて、十文字に幸せ自慢メールでも送ろうか。












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